個人投資家が機関投資家から学ぶロスカットの原則

「機関投資家の投資ルール」から学べること


日本の経済市場はあまり明るいムードになっているとは言えませんが、今後、日本株は再び上昇するのでしょうか。昨今の株式市場は、頻繁に乱高下を繰り返すので、投資を始めるタイミングは一段と難しくなってきたかもしれません。

しかし、このように株式マーケットが荒れ気味だからこそ、わたしたち個人投資家は「どのようにリスク管理していけばいいのか?」を改めて真剣に考えるべきです。とりわけ、市場が暴落した時のロスカット(損切り)のルールは機関投資家の運用から学べることが非常に多いと言えます。その理由は、近年起きた東日本大震災後の暴落からも学ぶことができます。ポイントは、暴落が起きて持ち株の値下がりが続いているときに、投資家としてどんなアクションを取るべきかです。

機関投資家は厳格なルールと基準で資金投資している


アベノミクス相場以前の相場下落と言ったら、みなさんは何を思い浮かべますか?2013年から本格的に始まったアベノミクス相場の前に大きく下落した相場と言えば、真っ先に「東日本大震災」後の暴落(2011年3月)が挙げられるのではないでしょうか。この時期は、多くの投資家が突然の相場下落に適切なロスカット(損切り)が実行できずに、大きなダメージを負ってしまいました。その中には、数百万単位の損失を受けた投資家も少なくないでしょう。それは、厳しく言えば多くの投資家に適切なリスクマネジメント能力が不足していたということです。

こうした大暴落に伴う一連の相場下落と株価の下落、投資家が直面した困難を見て私も、「個人の投資家こそ、リスク管理を徹底しなければならない」と改めて認識させられました。そこで自分の投資のリスクマネジメントを見直して、今では一層、自分の投資ルールを明確に定め、それを淡々と実行する投資生活を続けています。

わたしたち個人投資家と分けて、銀行や保険会社などの投資期間を株式投資の専門用語で「機関投資家」と呼びます。彼ら機関投資家は、預金や国内外の債券、投資信託などでお客様から預かった大量のお金を元手に、株式や債券などに投資を行います。この資金はあくまでもお客様から預かっているものです。なので、顧客本位の観点から、責任ある機関投資家としてできる限り損失を出さないように、コツコツとお金を増やしていく必要があります。

堅実に安全にお客の資産を増やしていくことを実現させるために、彼らは投資に厳格な投資ルールやリスク管理方法を定め、それを淡々と実行するわけです。もちろんその目的は、大切なお金を損失から守り、かつ利益を最大限に増やし、お客様に返すことです。

ではどうすれば投資の損失を避けられるでしょうか。具体的には、「投資方針書(リスクテイク方針書)」や「リスク管理方法」というものを定めています。

「投資方針書(リスクテイク方針書)」や「リスク管理方法」大まかに次のような項目があります。ちなみにリスクは「危険」、テイクは「取る」という意味なので、リスクテイクとは直訳すれば「リスクを取る」という意味になります。つまりリスクテイク方針書とはそのまま「リスクを取る方針についての書面」となるわけです。

リスクテイク方針書の主な項目
・運用収益目標、リスク許容レベルの設定(規制を考慮する)
・投資環境と投資方針
・アセット・アロケーション(資産配分・業種配分・地域配分)
・銘柄選択
・売買執行の方針(利益確定・ロスカットのルール等含む)
・モニタリング方針、リバランスの基準
・投資方針を変更する基準

機関投資家から学ぶべき投資のルール


さて、ここからが個人投資家が機関投資家から学ぶべき投資のルール、より正確に言えば機関投資家に学ぶロスカットのルールになります。先ほど挙げたリスクテイク方針書の項目から、個人投資家が参考にすべき運用ルールはなんでしょうか。ちょっと一緒に考えてみましょう。

個人投資家がリスクマネジメントで特に設定しておくべき項目は、「リスク許容レベルの設定」「アセット・アロケーション」「利益確定・ロスカット(損切り)ルール」「リバランスの基準」の4つではないかと思います。その中で今回はロスカットについて解説しています。

株式投資で負けている人、損ばかりしている人は、この投資ルールを設定して淡々と実行することが重要です。これこそが稼げる投資家が稼ぎ続ける極意なのです。

投資の格言からリスクマネジメントを学ぶ


企業の財務諸表をしっかりと分析し、チャート分析をもとにタイミングを計って投資をしたとしても、買った瞬間に値下がりするのは、よくあることです。しかしこれは本当に辛いもので、そんなとき、自分の下した判断は正しいのだと意固地になって、株価が戻るのを損切りせずに持ち続けている人が多いのではないでしょうか。私自身の自分の投資経験を振り返るとこれはあります。

値下がりする株をいつまでも損切りができないでいると、いつの間にか株価は買値の3分の2、ひどいときは半額、1/3になっているケースも少なくないのです。特に、長期目線で投資をしている人に多い傾向でしょう。その心理はひとことで言えば「長期的には株価は回復してくるから」という見方でしょう。希望的観測ともいえそうです。

投資の有名な格言に、「見切り千両」というものがあります。その意味は含み損を抱えた銘柄に対して、損失の少ないうちに見切りをつけることは、「千両の価値がある」という意味です。初めは自分が正しいと思っていても、思惑が外れたら、すぐに軌道修正しないといけないのです。なぜなら、正しいのは常に自分ではなく市場だからです。

でも、「市場がつねに正しい」「見切り千両」だと頭でわかっていても、自分の誤りを素直に認め、感情を抑えて売るのはなかなか難しいものです。「ロスカットはあらかじめルールを決めておき、機械的に実行しましょう」と言われても、わかっちゃいるけど、なかなかできない、それが人情ではないでしょうか。

そんな方にお勧めするのは、「株価が買い値よりも◎円(あるいは◎%)下がったら売る」という目安を設けて、この損切りを淡々と実行していくことで、損切りを実行することを経験し、「損切り慣れ」していくことです。初めは少額の損失でもかなりの痛手を負ったように感じますが、慣れてくると難なく損切りできるだけでなく、「損切りの有用性」を実感できると思います。

確実にロスカット(損切り)を実行する能力を身につける


実際、成功している個人投資家の多くは、こうしたロスカット(損切り)のルールを習慣づけています。参考までに私は、「株価が10%下がったら売る」というルールを実行しています。

例えば2000円の株価で買って1800円になったら、ためらわずに株を売って損切りをします。もし2000円の株を100株購入していたら2万円の損失、1000株単位だと20万円もの損です。このように、損失はけして少なくない金額になります。しかし、この損失惜しさに、「もう少しで値を戻すのでは」と切らずにいたら、20万円の損失がいつの間にか100万円になっていることが実際にあるのです。こうした経験をしている人は少なくないと思います。

実際、損を小さくできれば、残りの資金で運用することでリカバーできます。誰もがある程度自信を持って買いを入れると思いますが、こうした自信に基づく予測はおおかた外れます。億トレーダーと言われる個人投資家でも、値動きを完全に読むのは不可能なのを自覚しています。予測を外したときは着実に損切りを実行しているのです。だからこそ、彼らは勝ち続けることができるのでしょう。